誕生日にまつわる父の話

 
 【2020/3/2追記】
 オモコロ杯 2020にて銀賞をいただきました。 
 

 

 

誕生日と聞くと多くの人が誕生日プレゼントだったりパーティーだったりを思い出すだろう、僕もその例に漏れることは無いのだけれど、一つだけ人と違う思い出がある。

 

それは「お前たちは12に縁のある兄弟なんだ」という父のセリフである。

 

初めてこの話しを聞いたのは今から5年ほど前だったように思う。

酒に酔った父が突然話し出すものだから「はぁ?この酔っぱらいは何言ってんだ??」と思ったのを覚えている。

ボケるにしては早いしまだまだ働いて実家の住宅ローンを返してもらわないと長男の僕が困るので少し焦ったくらいだ。


前提として僕は3人兄弟で弟が二人居るのだが、父曰く「兄弟の誕生日は12という数字が共通している」というのである。
しかし、兄弟が全員12月生まれとか12日生まれであるとかそういうことでは無いし、手の指が12本あるとかそういうことでもない。

「はぁ?この酔っぱらいは何言ってんだ??」と思う僕の気持ちも分かってもらえると思う。

 

ちなみに僕を含めた兄弟の誕生日は以下の通りだ。

 長男(僕) 2/28
 次男    11/19
 三男    6/15

 

しかし、父曰くこういうことらしい。

 長男(僕)  2/28  ⇒ 2+2+8=12
 次男     11/19   ⇒ 1+1+1+9=12
 三男     6/15  ⇒ 6+1+5=12

 

説明を聞いたことで、当初の「はぁ?この酔っぱらいは何言ってんだ??」という気持ちはすっかり無くなり「なるほど、これは面白い」と思った。

よかった父の頭はまだまともだったのだ。これからも頑張って住宅ローンを払ってもらいたい。

 

そんな会話から数年たったある日に僕は気づいてしまった。
なんと僕の妻の誕生日にも12という数字が関わっていたのだ。

 妻 10/29 ⇒ 1+0+2+9=12
 

妻まで"12の法則"に当てはまると分かってから、父はこの説を「奇跡だ」と大いに熱弁するようになった。

そればかりか兄弟に彼女が出来れば「お前らは12に縁があるから彼女にもそういう縁があるかもしれない、彼女の誕生日はいつだ?」と聞いてくるようになったのだ。

そんな偶然は何度も起きないだろうという兄弟の意見を無視し「12」という数字を神聖視するようになった。


そんなこんなで否応なしに「12」という数字を意識しやすくなった僕だったが、この"12の法則"を聞かされてからずっと疑問に思っていたことがある。

 

それは「実は12を作るのは簡単なのでは?」という疑問だ。

 

日付というある程度偏った数字であるがゆえに"12"を作るのは難しそうな気もするが、父が思っているほど奇跡的な確率では無いのかもしれない…と考えたのだ。

 

父も母も"12の法則"には当てはまっていないが、身近な6人のうち4人が法則に当てはまるのなら、これは単純に「12」になりやすいという可能性がある。

 

これは決して父を馬鹿にしたいとか現実を突き付けてやりたいとかそういうのではない、むしろ尊敬する父が語る奇跡をより確かな奇跡へと昇華させるために必要な作業なのだ。素晴らしい親孝行ではないか。

 

早速だが父の尊厳のために中卒レベルの知恵を絞って「12の法則」を検証してみたいと思う。

なお、巷では生年月日を足し算した数字のことを「運命数」というらしい。

しかし、父の提唱する方法では月日だけ利用するため別物と考えてほしい。

「誕生日から計算する数字」というのも煩わしいので、偉大なる父に敬意を表してこの記事では便宜的に「ミラクルナンバー」という名称で呼びたいと思う。

 みんなも一緒に自分のミラクルナンバーを計算しながら考えてみてほしい。

 

【検証①】日付から作れる数字のリストアップ
まず最初に確かめたいのは「果たして12以外にいくつの数字を作ることが出来るのか」ということだ。

ちなみに父に計算方法のルールについて確認したところ「何でもいいから12になればいい」という大変ありがたいお言葉を頂いたので、ちょっと面倒ではあるが1/1~12/31までの日付について以下の4パターンで計算した結果をリストアップした。

 

<計算パターン>
 (A){月の十の桁}+{月の一の桁}+{日の十の桁}+{日の十一の桁}
  ※01/23の例 0+1+2+3=6
 (B){月の十の桁}+{月の一の桁}+{日}             
  ※01/23の例 0+1+23=24
 (C){月}+{日の十の桁}+{日の十一の桁}            
  ※01/23の例 01+2+3=6
 (D){月}+{日}                        
  ※01/23の例 01+23=24

 

<結果>
結論としては42個のミラクルナンバー(2~43までの連番)が作れることが分かった。
つまり今回問題になっている「12」というミラクルナンバーは約2.3%(1/42)の確率ということだ。

昨今のソシャゲ界隈ではSSRの排出率が1%以下なんて普通だが、そういった事例を除けば2.3%という数値は割と低確率と言えるのではないだろうか。

 

つまり、尊敬する父の「奇跡だ」という言葉は間違っていなかったのである。よかったよかった。

これにて検証完了!めでたしめでたし!!

 

…ということにはならないのが残念でならない。非常に残念だ。

 

尊敬する父のためにも「12の法則は奇跡的な確率で成り立っている」という結論で終わりたいのは山々なのだが、冷静に考えるとその結論にはまだ早い。

 

何故かというと、前述の計算ではうるう日を含めた366日について前述の4パターンで計算しているため1464回の計算結果が存在する。
先ほどの42個のミラクルナンバーは1464回の計算結果から重複したミラクルナンバーを除外した結果なのだがこの重複度合い(出現頻度)が問題になってくる。

 

簡単に言えば12が1464回の中で1回しか出てこないのか1000回出てくるのかで話が変わってくる、ということである。

 

仮に12が1/1464であれば確率0.06%というソシャゲでいうSSRレベルということになるのだが、1000/1464なら確率68%になり10連ガチャなら過半数が12ということであり、奇跡とは程遠い結果になってしまうからだ。

 

敬愛する父のためにももう少し検証を進めていく必要がある。


【検証②】ミラクルナンバー毎の出現頻度を算出
検証①の中で1464回の計算結果は得ているので、その結果を集計することで出現頻度を計算してみることにした。

では早速だが出現回数の多い順、つまりレア度の低い順から発表していこう。

 

レア度ワースト3
 1位 88回出現 「11」
 2位 86回出現 「12」
 3位 84回出現 「10」

 

終わった…。父よすまない。まさかのワースト2位だった。
トップ10くらいに入れば奇跡と言い張ったのに…

確率にすると5.9%だ。つまり検証①で算出した2.3%という確率から2倍以上も奇跡から遠のいてしまった。

ちなみにレア度トップ10は以下の通りだ。お気付きの方も多いと思うが足し算を行う関係で、極端に大きいor小さいミラクルナンバーの出現回数が少なくなりレア度が上がる傾向がある。

 

レア度トップ10
 1位 1回出現  「43」
 1位 1回出現  「42」
 3位 3回出現  「41」
 3位 3回出現  「40」
 5位 7回出現  「39」
 6位 9回出現  「38」
 6位 9回出現  「37」
 6位 9回出現  「2」
 9位 13回出現 「36」
 9位 13回出現 「35」

 

こんなはずではなかった。いや、このままではダメなのだ。
偉大な父の名誉のために僕の脳が奇跡に至るための一筋の光明に辿り着いた。


【検証③】誕生日ランキングを反映した確率の算出
誕生日ランキングという言葉を聞いたことはないだろうか?
これは誕生日ごとの出生数をランキング化したもので時々ネット上で話題なるものだ。
例えば1996~2013年のデータによると、この期間で一番多くの人が生まれた誕生日が12/25だということが分かる。
逆に出生数が一番少ない誕生日はうるう日である2/29だ。

 

つまり誕生日ごとに出生数にばらつきがあり、それはつまりミラクルナンバーのレア度にも影響を与える可能性があるのだ。

 

早速前述のデータ(1996~2013年)から誕生日ごとの出生割合を算出し、検証②のレア度ランキングに反映した結果がこれだ。

順位の変化が分かり易いように矢印(上昇は↑、下降は↓、変化無は-)を追記したぞ!親切だね!

 
レア度ワースト3
1位 88回出現 「11」 確率 10.7% -
1位 86回出現 「12」 確率 10.7% ↑
3位 84回出現 「10」 確率 9.8%  -

レア度トップ10
1位 1回出現  「43」 確率 0.3% -
1位 1回出現  「42」 確率 0.3% -
3位 3回出現  「41」 確率 0.8% -
3位 3回出現  「40」 確率 0.8% -
5位 9回出現  「2」   確率 1.1% ↑
6位 7回出現  「39」 確率 1.4% ↓
7位 9回出現  「38」 確率 1.6% ↓
7位 9回出現  「37」 確率 1.6% ↓
9位 13回出現 「36」   確率 2.2% -
9位 13回出現 「35」   確率 2.2% -

 

終わった…


【結論】
誠に遺憾ながら今回の検証では父の「12の法則」は全く奇跡的じゃないことが分かってしまった。

ちなみに検証結果を父にLINEしたら既読無視されたうえに弟にはめちゃくちゃ馬鹿にされた。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。